吸入型インスリンに対するクリティーク

JCN Newswireは6月27日、「ファイザー社の吸入インスリンEXUBERA(R)が肺に対する安全性と血糖管理を実現、長期試験における3年目の中間解析結果」と題する記事を掲載していた。


当該記事によれば、

  • ベースライン血糖値(A1C)は両群とも7.7%でした。3年後では、両群の患者さんに同等の改善が見られ、血糖値も維持されていました。(3年後に約7.4%のA1C値)
  • Exubera群の患者さんは、試験期間中を通じて対照群よりも低い空腹時血糖値を達成しました。
  • Exubera群の患者さんは3年間の試験期間中での体重増がインスリン注射群よりも少ないという結果でした。(インスリン注射群4.1キロに対してExubera群3.5キロ)一方、血糖値は両群同様に維持されました。
  • 有害事象は両群において同等でしたが、例外として咳と息切れ(呼吸困難)がExubera群でより頻繁に発生しました。これらの咳は、おおくが軽度であり、投薬直後に発生し、これによって治療中止に至ることは殆どありませんでした。

という試験成績だったようである。ここでクリティーク。

  1. 無作為割付はどのように行われたのだろうか。対象患者を乱数表か何かで2群に分け、吸入薬に「当選」した人は、ある日主治医から「あなた、今日からお薬変わりますから」とかなんとか言いくるめられて吸入薬に変更となったのだろうか。
  2. HbA1cの値において両群に差がなかったことで、空腹時血糖の差の話はほとんど帳消しだと思うのであるがどうだろうか。
  3. 低血糖症状の発現率が同等だったことも考慮すると、吸入薬の方が呼吸器症状が出るだけインスリン注射より害が大きいという総括になりそうだが、いかがであろう。
  4. インスリン注射とインスリン吸入薬の薬効にももちろん興味はあるが、インスラーとして知りたいのは、注射薬と吸入薬の「ユーザの立場から判断した使い勝手の差」である。外食時に使用する時の抵抗感の違いとか、旅行に出かける時の準備の違いとか、数字には表れにくい質的な違いについて僕は知りたい。