果物でメタボリックシンドローム撃退?

SANSPO.COMは「リンゴ、柿などたわわな季節 くだもの食べてメタボ撃退」と題する記事を掲載していた。いわく「くだものは食物繊維やポリフェノールなどが豊富なため、甘くても、糖尿病をはじめとする生活習慣病予防につながり、ダイエットにも役立つ」とのことらしい。


その理由について同記事では、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所健康機能性研究チームの見解を引用しながらつぎのように述べている。

くだもののGI値(炭水化物を含む食品の血糖上昇作用を数値化した指数)の低さにある。「豊富に含まれている水溶性の食物繊維が胃の中の粘度を高め、急激な血糖値の上昇を抑制する」のだ。果糖のような単糖類は血糖値を上げると思われがちだが、実際は、「くだものの糖類は、食物繊維の影響で吸収されにくい」。食物繊維がもたらす満腹感も利点で、リンゴの場合、「カロリー当たりの食物繊維はサツマイモよりも多く、水を含むと体積が12〜38倍にもふくらむ」。そのため、血糖値の上昇が緩やかになるうえ、「2時間後には血糖値が下がっているにもかかわらず、満腹感が持続しているという研究報告もある」
記事はいささか扇情的に書かれているので「ただ果物を食べれば良い」ように見えるが、よく読めばそうではないことが明らかだ。この利点を享受するのであれば、果物を摂取するより水溶性食物繊維を普段の食事と一緒に摂取するほうが効果的である。果物を食物繊維摂取の目的とするのであれば、普段の食事に含まれている食物繊維がダメで果物のほうが優れているという合理的な理由を述べる必要があると思われるが、あいにくそのような理由は書かれていない。果物に含まれている食物繊維が胃の中の粘度を高めるとのことだが、胃の中では糖分は消化されないし吸収もされない。「胃の中の粘度を高めること」と「急激な血糖値の上昇を抑制する」ことが、この文章では論理的につながっていない。


また、せんぽ東京高輪病院栄養管理室の見解を引用して、次のようにも述べている。

メタボ撃退にくだものを役立てるには、「朝、食べるのがおすすめ」。「キウイフルーツを2個食べるだけで、血圧を下げる働きをするカリウムを、1日の摂取目安量の3分の1近い580ミリグラムとることができる」。重度の糖尿病患者でも、「日中、くだものを食べる分には問題はない」という。
朝食には、野菜を食べるのが理想だが、時間がないときも食事を抜くのではなく、「食パン1枚、無糖のヨーグルト、くだもの1つという組み合わせでもよいので、きちんと食べること。とくに、20歳ごろより体重が6〜7キロ増えたという人は、朝にくだものを食べるようにしてください」。
これらの引用も、理由がまったく示されていないので、にわかにはいそうですか、と納得するわけにはいかない。なぜ朝食べるのがおすすめなのか。なぜ朝野菜を食べるのが「理想」なのか。時間がないときも・・きちんと食べること、って言ったって、きちんと食べる時間がないわけだから何をかいわんやという感じである。


たぶん、何らかの研究結果に裏打ちされた発言だと信じたいところだが、このような書き方では、糖尿病患者の弱みにつけ込んだ、ダイエット商法と何ら変わらないレベルの言い回しにしか感じられない。